東京高等裁判所 平成元年(行コ)13号 判決 1989年10月30日
東京都中央区日本橋本町一丁目一番八号
控訴人
株式会社アサヒトラスト
(旧商号 丸静商事株式会社)
右代表者代表取締役
中村文治
右訴訟代理人弁護士
矢島惣平
同
長瀬幸雄
同
久保博道
東京都中央区日本橋堀留町二丁目六番九号
被控訴人
日本橋税務署長
原重道
右指定代理人
野崎守
同
石黒邦夫
同
塚本博之
同
干場浩平
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が昭和六〇年一〇月三一日付けで控訴人に対してした昭和五八年三月分の源泉徴収に係る所得税の納税の告知及び不納付加算税の賦課決定を取り消す。
3 訴訟費用は、第一、二審を通じて被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文と同旨。
第二当事者の主張
当事者双方の主張は、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
第三証拠関係
本件原、当審記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 当裁判所も、控訴人の被控訴人に対する本訴請求は、いずれも失当としてこれを棄却すべきものと判断する。そして、その理由は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。
1 原判決八枚目表六行目の「及び」を「、原本の存在及び成立に争いがない」と改め、同裏四行目から同一一行目までをすべて削る。
2 同九枚目表九行目の「あったとの事実」の次に「及び本件議事録中に被控訴人の主張に対する認否及び反論2(五)のとおり「暫定的に各人別に配分額を決める」等の文言の記載がある事実」を、同一〇枚目表二行目の「同2(六)(4)の事実は、」の次に「前記乙第二号証、」をそれぞれ加え、同三行目の「及び乙第一、第六号証」を「、原本の存在及び成立に争いがない乙第一号証」と改め、同一一枚目裏三行目の「(小川義寛の証人調書)」の次に「及び甲第一一号証(平川正信の本人調書)」を加え、同四行目の「証人小川義寛の」を「右証人及び本人の各」と、同五行目の「原告関係者からの伝聞を述べたものにすぎないから、」を「右検討結果に照らして、にわかに」とそれぞれ改める。
3 同一二枚目表一行目の「成立に争いがない」を「前記」と、同末行の「源泉所得税を徴収して」を「所得税を源泉徴収し」とそれぞれ改め、同裏二行目の同三行目のとの間に改行して次のとおり加える。
「なお、本件役員につき、一旦確定した控訴人の支払債務がその後に免除され、各役員に対する現実の支払が結局なされなかった本件のごとき場合にまで、控訴人に源泉所得税を徴収納付すべき義務を負わせるのは不当ではないかとの疑問も生じ得ないわけではない。しかしながら、公平、明確を重視すべき租税法制度の目的に照らして考察すると、右の場合は、控訴人にとっても、また、各役員にとっても、一旦確定した役員賞与の支払債務を控訴人が各役員に対し現実に支払った後、その支払を受けた各役員が同額の金員を控訴人に贈与して提供した場合と経済的に区別すべき理由を見出すことは困難であるから、右の両場合を同視して、本件のごとき場合にも、控訴人に源泉所得税の徴収納付義務を負わせても格別不当ということはできないものと解すべきである。」
二 よって、原判決は相当であって、控訴人の本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥村長生 裁判官 前島勝三 裁判官 富田善範)